ストラヴィンスキーは1911年にディアギレフの率いるバレエ・リュスのために「ペトルーシュカ」を作曲した。バレエ・リュスというフランス語はロシアのバレエという意味である。1909年から1929年にかけてロシアからシーズンオフの劇場の素晴らしいダンサーたちを興行主ディアギレフがパリに連れて来て伝統あるロシアのバレエを西ヨーロッパに紹介し一世を風靡した。ドビュッシー、ラヴェル、サティ、ピカソやマティス、ジャン・コクトーやココ・シャネルら錚々たるアーティスト達がそれぞれの才能を惜しげなく披露した。
ペトルーシュカはピョートル(英語のピーター)の愛称。人の心を持った藁人形の失恋の物語であり、ロシアのバレエと文化の伝統を踏まえながら、近代の幕開けとなった記念碑的な音楽のひとつである。
作曲家自身によるピアノ独奏版「ペトルーシュカから3つの断章」は、オーケストラの中でピアノパートの大活躍する原曲に触発されたアルトゥール・ルービンシュタインの「最も難しいピアノ曲を」との依頼で1921年に編曲された。ルービンシュタインはディアギレフの5倍の報酬をストラヴィンスキーに払ったとか。
第1曲「ロシアの踊り」(上の動画では00:00)では、魔術師に命を吹きかけられた3体の藁人形、ペトルーシュカとバレリーナ、ムーア人が踊る。
第2曲「ペトルーシュカの部屋」(02:35)ではバレリーナに恋をしたペトルーシュカ、ムーア人に好意を寄せるバレリーナと荒々しいムーア人の三角関係が繰り広げられる。
第3曲「謝肉祭」(07:20)では、乳母の踊り(08:28)、行商人と二人のジプシー娘(11:20)、馭者と花婿の踊り(12:35)、仮装した人々のお祭り(14:43)が描かれる。
バレエではこの後、お祭りの喧騒の中にペトルーシュカとムーア人が現れ、ペトルーシュカは群衆の前でムーア人に殺され騒然となる。魔術師は藁人形であったことを示しことなきを得るが、ペトルーシュカの亡霊が一人残った魔術師のもとに現れ、恐怖に駆られたところで幕が降りる。詳しくはボリショイバレエの作った映像などをご覧ください。
6月11日兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホール、6月25日サントリーホールブルーローズにてリサイタルをいたします。詳細はリンクをご覧ください。